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「何歳からウクライナに連れて行かれるの?」 戦争がロシア人エリートを追い詰める(翻訳)

匿名寄稿者

 

家庭教師は混迷の国に別れを告げる


9月下旬のこと。ウラジーミル・プーチンが全国的な動員令を出して間もない頃、14歳になった教え子が父親に尋ねているのを偶然耳にしました。不安げな様子で「何歳になったらウクライナに連れて行かれるの?」と。父親は少年を抱きしめて、まだ若いから大丈夫だと安心させていました。この家族と過ごした月日の中で、ボスが子供に向けてこれほど愛情を露わにしたのは見たことがありません。


以前はもっと血気盛んな子でした。2月に最初の「特別軍事作戦」がウクライナで始まったとき、彼は私にロシア政府の方針を厳かに繰り返してみせ(ロシアは強大で正しく、ウクライナは真の国家ではない)、学校では友人と愛国的なジョークを話していました。近頃はしかし、彼の広めるミームのすべてが親ロシア的でなく、ウクライナ発のものすら混ざっていることに気が付きます。また別の日には、有名なビデオゲームのキャラクターにウクライナ兵が扮するTikTokクリップを私に見せてきて、さらには友人とそのクリップを再現した映像も披露してくれました。真似しているのがウクライナ兵だと分かっているの?と尋ねると、肩をすくめられました。


さらに深刻なメッセージが、混乱するソーシャルメディアの中で出回っているようです。上記のハグを目撃した直後、彼と一緒に宿題をしていると、教え子は不意にこう言いました。「ロシアは戦争に負けると思う」と。なぜそう考えたのか尋ねると、「ただそう聞いただけだよ。誰もあそこで戦いたくないんじゃないかな」 宿題はそのまま再開されましたが、彼が言ったことの重みは中々遠のいてくれませんでした。

 

戦争が始まって以来、愛国的な確信を薄れさせてしまったのはこのティーンエイジャーだけではありません。誰かが街の建物正面に大書した巨大な”Z”(プーチンの侵略を支持するシンボル)は、今やもうありません。戦場でのロシアの躍進を揶揄する人もいますが、咎める声はありません。召集が空気を変えてしまいました。


ロシアでは徐々に男性を見かけなくなりつつあります。数十万人が動員され、それより遥かに多くの人が徴兵を逃れたからです。最近、カフェでトルコにいるボーイフレンドについて話す女性たちを見かけました。軍隊もあまり尊敬されなくなっています(「ロシア兵は世界で二番目に優秀だと言われるけど、私の夫は三番目か四番目がせいぜいだと思うわ」というジョークも出回っています)。だから徴兵逃れもあまり恥ずかしいことではありません。

 

“I think Russia is losing the war. That’s what I heard. I think nobody wants to fight there”

 

私の知り合いで、パートナーが国を去ったという女性のうち幾人かは、彼女たち自身も知らなかったタフネスを発見しつつあります。ある友人は国外のボーイフレンドに送金するために仕事を掛け持ちしています。トルコに出奔した彼には収入がないからです。彼女はボーイフレンドが召集を逃れて安全でいるのにほっとしていて、疲れた様子など微塵も見せません。別の友人もボーイフレンドのために同じことをしています。「彼は私を10年も支えてくれたの。今度は私の番よ」と彼女は言います。


反対に、近しい人を戦地に送り出す人々は取り乱しています。友人のひとりが泣きながら電話を掛けてきて、聞けば半分血の繋がった弟が召集されて、10月の終わりにウクライナに行くと言うのです。「彼は怖がってるわ。手紙が来てお父さんと一緒に泣いてたの。まだ若いのに」 彼女は弟が死ぬことを確信しているようでした。

 

知り合いで戦争に行った人はいませんが、ボスのボディガードを務める30代の青年は、はっきりと召集を予期しています。動員が発表されてからの数日間、彼は私用の電話のために何度も席を外していました。最近彼と二人きりになる機会があったので、どうするつもりなのか尋ねてみました。「出ていくなんて無理だよ。英語も話せないし」と返されました。「ここでの仕事に満足してる。トルコに行って、何ができるんだ?」 彼はせめて、呼び出される前に妻を妊娠させることを望んでいます。

 

Men are becoming less visible in Russia: hundreds of thousands have been conscripted and many more are fleeing conscription

 

私は夜に街に出かけるのが好きですが、一見して外国人だと分かる風貌なので、かつてロシアでは酔っ払いに一方的に絡まれていました。大半は愉快な出来事です。「お前はなぜここにいる? お前の国の男はみんな女で、女はみんな男なのか? ここじゃ違うからな」とある知人は2018年にわめいていました。しかし、今や戦争が酔いを覚ましてしまったようです。最近近所のバーで電話を掛けて、それが英語でのやりとりだったのですが、通話を終えると同時に険しい顔で一人飲んでいた男から、イギリスで徴兵が行われたことはあるかと尋ねられました。第二次大戦以来、そんなことは無かったと思う、と答えると、彼はこう言いました。「良いね。この国のような暮らしなどあってはいけない。君は何でここにいるんだ? 俺のように、ここにいなければならないわけじゃないだろう」

 

ここいらが潮時でした。過去十年間の大半において、私はロシアを故郷のように考えていました。それが今や、私の理解が及ばず、その一員ともなれない事態の只中にいるのです。四日後に、私は荷物をまとめて出発しました。■

 

筆者は最近までロシアに住んでいた。名前や詳細のいくつかを変更している。

彼の最初の記事はこちら、二番目の記事はこちら、その他のウクライナ侵略に関する証言はこちらから。

 

👇原文👇

www.economist.com

 

訳した人間による追記

以下の記事の続き

831.hateblo.jp

831.hateblo.jp

 

今となっては何でこんなもの訳したんだろう。